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始まりの音・W


ミライが空を見上げ呟いた。
「ねぇ。どうしてこの国は戦争してるの?」
「悪魔(テキコク)に欲しがられたからだよ。」
カズが答える。
「なにを?こんな何もない国欲しがるものなんてないじゃない。」
ミライは視線をカズヤに移す。
「あるよ……技術が。」
ノゾムが遠くに見える、ヒトミとカイトの影を見ながら言う。
「なんの?」
ミライはカズヤからノゾムに視線を移した。
「…兵器を作る技術。」
ノゾムはそう言うと、遠くの影から視線を外した。
「え?だって、この国って平和大国で、兵器なんて…」
「そのはずなんだけどな。情勢が悪いのに、武器を持ってなかったらすぐに“カモ”にされる。そうならないように、兵器を作れるようにしてるんだ。」
「じゃぁ、なんで?なんで、この国は戦わないの!?」
ミライの問いかけにカズヤは目線を下げた。
「どこかに兵器はあるはずだよ。」
「じゃぁ、なんで?」
ノゾムが口を開く。
悪魔テキコクに戦いを挑んでしまったら、世界全土が襲ってくるんだ。」
「そんな…」
「けど、それは昔の話」
カズヤはそう言うと、外の二つの影に目を移した。
「どういう…こと?」
ミライはカズヤを見つめる。
「少しずつだが、この国に同情してくれる国がいたり、この国に来ている外人たちの母国で彼らの親類たちがデモを起こしたりしてるらしい。」
「じゃぁ、いい方向に向かってるの?」
カズヤは頷く。
カズヤの目線の先にいた1つの影がゆったりと、動き出す。
1つの影はだんだん大きくなった。
近づいて来たのは、カイトを見てカズは問いかける。
「カイト、ヒトミは?」
「一人になりたいって…」
「そうか…」
誰もがうつむく。
長い沈黙。
その沈黙を破ったのはミライだった。
「ねぇ…誰かがヒトミに話しかけてるよ…」
3人はヒトミのいる場所をみる。
2つの影。
「…誰?」
カズヤが影を見て呟く。
カイトが眉間にしわを寄せる。
ノゾムが走り出す。
そして、カズヤ、カイト、ミライがつづく。



ヒカルに拾われた日の前の晩、一緒にいた男が目の前で微笑んでいた。
「何の用?」
ヒトミは男に聞く。
「お金。」
男は笑う。
「金?何の話?」
ヒトミはアザケるように笑う。
「盗っただろう?あの時。」
「人聞きの悪い。報酬よ。」
「あんな高い報酬があってたまるか。孤児ごときに」
「その孤児ごときに金、奪われたんだから諦めなよ」
男は鼻で笑い、ヒトミのアゴに手をかける。
ヒトミは男を睨みつける。
「ベィビィ…君はそんな子じゃないだろう?」
男はヒトミに語りかけるように言う。
「こんな子よ。ずっと昔から…ネ」
「ベィビィ、よく考えなさい?君は、僕のモノだからね。」
「ふざけないで」
「あの日だけだったでしょう?」
「僕の中では違うんだよ」
「何よそれ。」
男はクスクスと笑う。
「思い出せばいい。」
「思い出す?何を??」
「消し去られた過去。」
「は?」
「ベィビィ。ナイトが来たね。」
走ってくる四人が見える。
「…そうね。」
「ベィビィ、愛してるよ」
「私はあんたの事嫌い。」
男は笑う。
「そのうち好きになる。」
「ならない」
「さて、ソロソロ行かないと危ないかな?」
「そうね」
「あぁ、ここから西に5キロほど行けば、君の昔の自宅があった所につくかもね」
「……そう」
男は微笑む。
「そうだよ。」
「じゃぁ…オヤスミ、ベィビィ。」
男は言葉を続ける。

桔梗キキョウを君に。』

男は微笑む。
その笑顔を見ながらヒトミは意識を手放した。





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