BACK  HOME  TOP  NEXT



始まりの音・V


運命とはいたずらが好きなもの。
そのいたずらは時に悲劇を生み出す。


ヒトミの視界は赤く染まっていた。
記憶が、かぶる。

赤い、紅いもの。

− 赤い水溜り −

細い腕が視界の端に見える。

− 瓦礫から伸びる腕 −

“ソレ”に触れる。

− 冷たい −

うなり声

− 大切なモノ −

− 大好きだった人 −


「ぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ヒトミは言葉にならぬ声で叫び続ける。
瞳から流れ落ちる涙。
目の前にあるユメの顔は…
叫びが止まる。
ユメは笑っていた。
「ヒトミ、大丈夫だよ。」
ユメはかすれた声で言う。
遠くから聞こえる、4人の声。
「大丈夫。安心して」
ユメは再び言う。
ヒトミは首を振る。
「大丈夫。」
ユメは自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
4人がユメの上から瓦礫をどける。
すると、ユメは瞳の上に倒れこむ。
4人が叫ぶ。

爆音。

ユメが何かを言う。
4人が首を振る。

また、爆音。

ユメが笑う。
4人が叫ぶ。

そして、爆音。

ユメが微笑んだまま目を閉じる。
カズヤはゆっくり立ち上がると、ヒトミに近づき、立たせる。

爆音。

残りの3人も立ち上がる。
みんなの目には涙が溜まっている。
4人は走りだす。
ヒトミはユメを見て呟いた。
「ユメ、ごめんなさい。」
カイトが戻ってきて、ヒトミの腕を持ち走り出す。
ユメの体は瓦礫の上に横たわっている。
そこに、一人の男が現れる。
「ユメ…」
そう言うと、彼女の体を抱き。
どこかへ歩いていく。
5人の子供たちは振り返らず走ってゆく。
ユメの最後の言葉を胸に…
悲しみをこらえ、走り続ける。



『どんなに辛くても、私の分まで生きてね。』





BACK  HOME  TOP  NEXT










SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送