始まりの音・Z
一時間ほど歩いた5人はやっと目的地に着いた。
かつては、赤レンガの家が建っていたと思われる街。
石畳は所々しか原形を残していなかった。
たまに瓦礫の下から白骨らしき物がのぞいている。
「うわ…」
ミライは思わず声を上げる。
ヒトミは苦笑し、教会のある場所に足を進める。
彼女は予感していた。
彼が、そこにいるということを。
「ヒトミ!」
カズヤがヒトミを呼び止める。
「なに?」
「ミライがぐずりだしたから、少し休もう。な?」
ミライは少し離れた場所でノゾムにたしなめられながら、しゃがみこんでいる。
「それでも、私より年上なの?」
少し、嫌味をこめて言うとカズヤとカイトは聞こえたらしく苦笑した。
「ここ昔は綺麗な街だったんだろうなぁ」
ノゾムが呟く。
「うん。結構綺麗な街だったよ。」
ヒトミはその場に寝転び、目を閉じた。
うっすらと聞こえる4人の会話を聞きながら、この街の昔の姿を描いていた。
「あ、鐘の音が聞こえる。」
ミライはそういったとき、ヒトミにまたあの頭痛が襲った。
「やぁっ!!」
そう叫び、ヒトミは起き上がった。
4人が何か言う。
しかし、その声はヒトミには届いていない。
『僕が君にもう一度出会ったときに、君がまだ、そのことを考えていたら僕の力、貸してあげるよ。』
−本当?
『本当。ただし、条件がある。』
−条件、ね。あんたらしいね。それで…何?
男に渡された青い花。
『この花は桔梗。』
−ききょう?
『そう、綺麗だろう?』
−・・・
『その花の花言葉は、やさしい愛情、誠実、変わらぬ愛、従順』
−だから?
『その花は僕の気持ちだよ。』
−ふーん。従順…ね
私はその花を一輪挿しの花瓶に入れる。
−私、しばらく一人で考えようと思う。
『なにを?』
−色々。
『そう。いんじゃない』
−ありがとう
『でも、どうなっても知らないよ?』
−もう、あんなことなれた
『慣れるべきものではないだろう?』
−仕方ないよ。私は外人だから。
『そんなこと関係ない。』
−そうね…けど、宿命には逆らえない
私は懐かしいあの廃屋に入る。
『久しぶり。―――。』
−生きてたの
『ひどいね、―――。』
−そう?普通じゃない?
『おいで…』
−なぜ?
『傷…増えただろう?』
−…
『心配しているんだよ?おいで?』
−………うん。
奴はクスクスと笑う。
『あの話…』
−受ける。けど、今回限り。
『そう。』
奴と私の間には一丁の銃がある
−消して…記憶を
『…なぜ?』
−嫌だから
『なにが?』
−貴方が…
『そっか…さみしいな。』
−…嘘のくせに
『そんなこと無い。僕は君が好きだからね。』
−そんな言葉に私はのせられない。
『分かってるよ。』
−なら、いいの。
『じゃぁ、こっちに。』
奴の顔が見える。
「ベィビィ。思い出したかい?」
ヒトミは頭をおさえたまま、顔を上げる。
「…あんた…」
「ひさしぶり」
男はそういい微笑んだ。
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